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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3049号 判決 1950年4月06日

被告人

菰田芳光

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人両名を各懲役壱年に処する。

但し各参年間右刑の執行を猶予する。

理由

弁護人豊蔵利忠の控訴趣意第一点について。

しかし記録を精査すると、被告人等はたとえ所論のように原審第一囘公判期日の当日裁判所構内において弁護人選任に関する通知書及起訴状の謄本を受取つたとしても被告人等は開廷前裁判所に対し弁護人の選任又は国選弁護人選任の請求をしない意思を表明した囘答書を提出しているし、起訴状謄本の本人交付送達について被告人等の防禦方法準備のため相当の猶予期間を置かなかつたと云うことで被告人等が異議を申立てた形跡は見えないからその瑕疵は治療されたものと云うべく、従て原審の訴訟手続に違法は存しない。論旨は理由がない。

(弁護人豊蔵利忠の控訴趣意第一点)

第一、原審判決は判決に影響を及ぼすこと明白なる訴訟手続上の法令違反がある。

原審は被告人に対する合法なる起訴状の送達並に弁護人選任の通知を怠つたものである、一件記録の送達報告書による起訴状及び弁護人選任に関する通知書が大阪拘置所長宛送達されあるも一件記録に依り明白なる如く被告人菰田芳光は不拘束の儘起訴されたるものにて右送達当時大阪拘置所に在監せざりし事明白であるので右送達は何等効力無きものである。其の後記録上起訴状が被告人に送達されたる何等の証拠無く唯弁護人選任に関する囘答書のみ存するも之とて日付の記載無く何時被告人が弁護人選任に関する通知を受けたのか不明である。

事案は原審は被告人に対する第一囘公判期日の召喚状の送達をも忘却し被告人は公判期日の前日相被告人長谷川の家族より第一囘公判期日を聞知し任意該期日に出頭して裁判所構内に於て起訴状並に弁護人選任に関する通知書を受取つたのであるが原審は被告人の出頭を幸いとして相被告人と同時に被告人の審理を開始し同日即決裁判を為したものである。

然らば原審は刑事訴訟法第二百七十一条第二百七十二条第二百七十五条最高裁判所規則第三十二号第百七十六条第百七十七条第百七十九条憲法第三十七条第一、二項に違反するものであつて之が為被告人は充分に訴訟上防禦の策を講ずる事が出来なかつたものであつて右違反の判決に影響を及ぼす事は論をまたないと信ずる。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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